食事のこと
食事のこと
心臓病に対する食事療法
食塩をとりすぎると、体内のナトリウム濃度が高くなり、それを薄めようとして体が水分をためこみます。 その結果、水分の排出がうまくいかず、血圧が上がりやすくなります。 さらに、高血圧は動脈硬化を進め、心臓に負担をかけたりむくみの原因になったりします。 心臓を守るために、食塩を控えた食事を心がけましょう。
健康な人の1日の塩分摂取量は、男性 7.5g、女性 6.5gが目標です。 高血圧、心疾患のある人は、医師から指示された塩分摂取量(一般的に6g 未満)を守りましょう。
脂肪は大切な栄養素ですが、気をつけなければならないことが2つあります。 脂肪(脂質)は炭水化物(糖質)より高カロリーで、肥満を招く大きな要因になります。 食事療法の実践では、適切なカロリーの範囲で栄養素のバランスがとれた食事を摂ることが大切です。 脂質を抑え、適正量の糖質をとるように工夫します。
もう1つ注意点は、コレステロールです。 コレステロールの摂り過ぎは動脈硬化の進行、ひいては心臓疾患や脳梗塞の発症につながります。 コレステロールを多く含む、脂身の多い肉や、魚の内臓、卵の摂取量に気を付けましょう。
血中のコレステロール濃度を下げるためには、植物性油や魚類の油に多く含まれている不飽和脂肪酸を多く含む食品を増やしましょう。 一般に、飽和脂肪酸(動物性脂肪)1に対して不飽和脂肪酸(植物性油や魚類の油)2の割合でとるのが望ましいとされています。
また、食物繊維のなかにはコレステロールの吸収を下げる効果があるものがあります。 きのこ、海草、こんにゃくはカロリーが非常に低く、食物繊維に富んでいるので、肉類の付け合わせや、副菜などにして食べ合わせるとよいでしょう。
食物繊維は消化酵素で消化されない食物中の成分です。 胃から腸を通過していくときに、余分なものを吸着して掃除する働きがあります。 また、食物繊維は便秘を予防し、排便をうながします。
また、食物繊維は胆汁酸を吸着します。 すると、新しい胆汁酸をつくるために肝臓に貯えられたコレステロールが使われるため、結果的に血液中のコレステロールは減少します。
食物繊維を多く含む食品には、以下のようなものがあります。
- 麦などの雑穀
- 豆類
- いも類
- 根菜類
- 海草類
- きのこ類
- 果物(ただし果糖が多いので食べすぎに注意)
海草類、きのこ類、こんにゃくは低カロリーなので、カロリー制限をしている方にお勧めの食品です。 また海草類、きのこ類はビタミン、ミネラルも豊富に含まれているので、積極的にとりましょう。
野菜は生で食べるより、火を通したほうがたくさん食べられます。 サラダだけでなく、野菜スープや根菜の煮物などをメニューに加えると食物繊維をたくさんとることができます。
カリウムは、ナトリウムとともに、細胞の浸透圧を維持しているほか、酸・塩基平衡の維持、神経刺激の伝達、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節などの働きをしています。 また、カリウムは腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制して、尿中への排泄を促進するため、血圧を下げる効果があります。
しかし、腎臓の機能が低下している場合はカリウムの過剰摂取に注意が必要です。 腎不全などで腎機能が低下するとカリウムがうまく排泄されなくなり、高カリウム血症になります。 高カリウム血症になると、筋収縮が調節できなくなり、四肢のしびれ、心電図異常などの症状が現れ、重篤な場合は心停止を起こすこともあるため、注意しましょう。
塩分を多く含む食材
以下の調味料は塩分が多く含まれているため、使用量に注意が必要です。特に、高血圧や心疾患の予防には塩分摂取を控えることが重要です。 ・塩、塩こしょう(穴が比較的大きく一度に塩が出るため、使用時に注意が必要) ・塩麹 ・ゆず胡椒(柚子、唐辛子、塩で作られており、分量の約 1/4 が塩分) ・みそ ・塩こうじ ・醤油

これらの調味料は料理の味を引き立てるために少量で使うようにし、減塩タイプの調味料を選ぶのも効果的です。
麺類には麺だけでなく、スープにも多くの塩分が含まれているため、頻繁に摂取すると塩分 過多になりがちです。ラーメン、うどん、そばなどの麺類を食べる際には、週 1 回程度に抑え、 スープは飲まないことを心がけましょう。スープを残すと 3ℊ程度の減塩になります。また、 インスタントの粉末スープには 1 袋約 5~8g の塩分が含まれており、すべてを使わずに、1/2〜 2/3 程度に減らして使うと塩分を調整することができます。さらに、トマトベースのパスタ など、汁が少なく塩分控えめの料理を選ぶこともおすすめです。

以下の食品は塩分が多く含まれています。 ・加工食品(加工食品は練り製品、ハム、ベーコン、チーズなど)

・漬物(例:梅干し、らっきょう、沢庵、柴漬、佃煮、明太子、寿司につくガリなど)

・汁物(例:味噌汁、スープ、すまし汁、お茶漬けの素など)

※インスタントの味噌汁は 1 食あたり塩分約 2ℊであり、手作りした場合よりも多くなる ため、注意をしましょう。 これらは日常的に食べることが多い食品ですが、頻度を減らし、出汁の風味を活かした薄味 のものを選ぶなど工夫することで、塩分を減らすことができます3)
醤油を使った料理が 2 品以上含まれる献立は、塩分が過剰になる可能性があります。たとえ ば、煮物とお刺身などで醤油を多用する場合、どちらかの料理の味付けを控えめにする、刺身 をカルパッチョにするなどの調整をしましょう。

弁当や総菜の選び方
主食(ごはん)、主菜(肉や魚、卵、豆腐などのおかず)、副菜(煮物や和え物、おひたし、サラダなど)がそろったお弁当は、栄養のバランスがよく、健康的なお食事としておすすめです。 また、漬物や梅干し、パックに入ったしょうゆやソースを使わないようにするだけでも、簡単に塩分を控えることができます。
一方で、丼ものや麺類は、味がごはんや麺にしみ込んでいることが多く、塩分の調整が難しい場合があります。 たとえば牛丼は、ごはんにもタレの味がついているため、塩分を減らすには料理を残す必要が出てきます。 しかし、それでは必要な栄養まで不足してしまい、結果的にお食事のバランスがくずれてしまうことがあります。無理のない範囲で、バランスのよい食事を心がけてみてください。
※ 中食とは、自宅以外で調理された食品を購入して持ち帰り自宅で食べる食事形態のことです。 中食の特徴:① 便利で手軽、② 自宅で様々なメニューが楽しめる、③砂糖・油・塩が多い傾向があるため注意が必要。

惣菜を選ぶ際は、後から野菜などを加えて味を調整しやすいものを選ぶと減塩につながります。
- ひじきの煮物: 野菜(例えば、にんじんや大豆、しいたけなど)を追加して温め直すことで、味のバランスを保ちながら塩分の濃度を薄めることができます。 簡単に塩分量を調整でき(味の濃い副菜の量が半分になる)、減塩が可能になります。 例えば、ひじきの煮物にブロッコリーやトマトを足して「ひじきサラダ」にすることで、味が濃すぎることなく、バランスの取れた一品になります。煮物の味がしっかりしているため、ドレッシングを使わずに済み、さらに減塩になります。
- 切干し大根の煮物: しめじやインゲンを加えて温め直すことで、塩分を薄めながらボリュームを増やすことができます。
コンビニやスーパーで手頃なサイズの冷凍野菜が手に入るため、手軽にアレンジでき、減塩しながら栄養バランスを整えることが可能です。

惣菜やお弁当には、食品表示法に基づき塩分量が記載されています。 特に、コンビニや大手スーパーで販売されている食品には塩分量の表示があるため、購入時に確認する習慣をつけることが大切です。
一般的に、1 食あたりの塩分摂取量は 2g 未満が推奨されています(※高血圧の方や減塩が必要な方の場合)。 この基準を参考にして、できるだけ塩分が少ない商品を選びましょう。
また、食品の塩分表示には、100g あたり、100ml あたり、1 食分、1 包装あたり など、異なる単位が使われることがあります。 表示単位を必ず確認し、実際に摂取する量の塩分がどのくらいになるか計算することが重要です。

減塩に使える調味料
調味料にはさまざまな種類がありますが、和食でよく使われる醤油や味噌と比べると、洋食の調味料のほうが塩分含有量は少ないものが多い傾向があります。 しかし、すべての洋食調味料が低塩分というわけではなく、コンソメやスープの素などの汁物用調味料には、塩分が多く含まれていることがあるため注意が必要です。
調味料を購入する際は、必ず栄養成分表示を確認し、塩分量を把握した上で選ぶことが大切です。 減塩タイプの商品も増えているため、無理なく減塩を進めることができます。
また、市販の塩の中には、塩化ナトリウムの量を減らし、その代わりに塩化カリウムを含んだ「減塩塩」があります。 一般的には減塩の助けになりますが、腎機能が低下している場合、体内のカリウムが過剰となり、かえって危険になることがあります。 使用を考えている方は、必ず主治医に相談しましょう。
以下の調味料は、一般的に醤油よりも塩分が少ない傾向があります。 ただし、使用量が増えれば塩分摂取量も増えるため、使いすぎには注意が必要です。
- ウスターソース
- トンカツソース
- お好みソース
- ケチャップ
- マヨネーズ
- ピザソース
- 油を使ったドレッシング(ノンオイルドレッシングよりも同じ量で使用した場合、塩分は少ない傾向があります)
- 焼き肉のたれ
- マスタード
- ポン酢

次の調味料は、塩分を含まず、料理の風味を引き立てるために使用できます。
- 酢(すし酢等の調味酢を除く)
- レモン果汁、すだちなどの柑橘類
- 胡椒
- わさび
- からし(※チューブタイプのものは加塩してある場合があるので注意)
- カレー粉(無塩のもの)
- 一味唐辛子、七味唐辛子
- にんにく(ガーリックパウダーなども含む)
- しょうが
- ハーブ類
